【解析の心構え編】SOLIDWORKS Simulationで構造解析しよう

設計した部品やアセンブリに対して、強度や剛性が許容値範囲内か確認するために、構造解析をしたいという場面があるかと思います。

SOLIDWORKS PremiumのライセンスやSOLIDWORKS Simulationのアドインをお持ちの方は、SOLIDWORKS Simulationの機能を使用することができます。

SOLIDWORKS Simulationでは、作成した3Dモデルに対して、有限要素法(FEM)による構造解析を行うことができます。

SOLIDWORKS Simulationを用いて構造解析をすることで、手計算では難しいような形状の計算でも、発生応力や変形量を確認することができます。

大きな力が加わる部品や、高い剛性が求められるような部材は、簡易的にでも構造解析を行うことをおすすめします。

条件設定や結果の考察など、難しい場面もありますが、丁寧に解説しますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。

sugitama

①解析の心構え、②条件設定③メッシュ④結果考察 の4部に分けて解説いたします。

本記事では ①解析の心構え について解説します。

この記事が役に立つ人
  • 設計した部品やアセンブリの強度を確認したい方
  • 部品の無駄を省いてコストダウンを図りたい方
  • 構造解析に興味があり、構造解析をやってみたい初心者の方
  • 設計経験の浅い若手設計者
  • SOLIDWORKS Simulationを使用できる環境にある方

 

構造解析とは

構造解析では、構造物をCADなどのソフトウェア上で作成し、静的荷重や動的荷重をかけ、構造物の挙動を算出します。

構造解析によって、構造物の耐久性や、壊れやすい箇所などを分析することができます。

構造解析には、応力解析や振動解析など、様々な解析手法が含まれます。

構造解析では、有限要素法などによって解析する対象を小さな要素に分割して、各要素に働く応力を計算して求めます。

計算した応力は、そのままでは把握できないため、3次元画像に変換するソフトウェアと組み合わせて使われます。

(参考:Google Bard)

構造解析とは、PCの仮想空間上で、部品に荷重や熱などの条件を加えて、どのような挙動をするかをシミュレーションすることです。

設計者が作成した部品やアセンブリに対して、想定する使用環境下で求める性能を満たすかを知りたいときに構造解析を行います。

  

似たような意味を持つ言葉として、CAEFEMFEA有限要素法有限要素解析構造シミュレーション強度解析などの言葉があります。厳密には異なるものですが、こと機械設計においては、すべて同じような意味ととらえて問題ありません。

 

sugitama

構造解析のメリット・デメリットを以下に解説します。

特にデメリットは、構造解析を行う上での心構えとして頭に入れておくことをおすすめします。

 

 

構造解析のメリット

構造解析を行うことで、以下のようなメリットが得られます。

構造解析によるメリット
  • 複雑な形状の部品でも、強度の計算が簡単にできる
  • 計算結果が視覚的にわかりやすい
  • 試作や実験の回数が減り、時間もコストも削減できる
  • 実験では難しい条件も再現できる
  • 材料力学の知識とセンスが磨かれる

以下に詳しく説明します。

 

 

複雑な形状の部品でも、強度の計算が簡単にできる

設計する上で、部品によっては複雑な形状の部品も出てくるかと思います。

そういった部品に対して、強度的に安全かどうかを確認するには、手計算ではなかなか難しいです。

手計算では扱いきれないような形状であっても、構造解析を行えば、簡単に強度計算を行うことができます。

これにより、設計不良を未然に防ぐことができます。

手戻りが減り、設計作業の効率化を図れます。

sugitama

構造解析であれば、部品の応力・変位計算も簡単に行えます。

設計不良による不具合トラブルも減り、設計者のメンタルも保全されます。

 

 

計算結果が視覚的にわかりやすい

応力や変位の状態を3Dモデル上でコンター表示できるため、応力の分布が一目でわかります。

また、変形の様子をアニメーションで見ることも可能です。

構造物全体の分布がわかるため、応力の集中箇所や、負荷のかかっていない効果の薄いリブなども見えてきます。

応力の高い箇所には補強し、応力の低い箇所は薄肉にするなどすることで、コストダウンや形状の最適化を効率的に行えます。

視覚的にもわかりやすいため、お客さんへの説明資料などにも使用できます。

  

 

試作や実験の回数が減り、時間もコストも削減できる

新規設計の際は、求める機能を満たすか確認するために、試作したり実験したりする場面もあるかと思います。

しかし、構造解析をすれば、試作しなくても性能を満たすか確認できるため、試作品を作る開発コストを抑えることができます。

また、試作品の製作待ち時間を抑えられ、トライ&エラーのサイクルスピードが上がり、開発期間の短縮を見込めます。

試作する場合でも、闇雲に試作するではなく、ある程度見極めができたものを厳選して試作できるため、試行回数を抑えることができます。

 

実験では難しい条件も再現できる

現実世界では再現するのが難しいような条件であったり、再現するには装置などのコストがかかりすぎたりする場合でも、構造解析で再現することができます。

「熱による影響を見たいが、恒温槽がない」とか、「大きな荷重をかけたいが、いい装置がない」などといった場合でも、実験の代わりに構造解析で結果を得ることができます。

例えば、何十年に一度の規模の災害を想定した解析なども、シミュレーションすることができます。

 

材料力学の知識とセンスが磨かれる

強度設計は機械系設計者にとって非常に重要です。

構造解析の業務を通して、その核となる材料力学の知識とセンスを磨くことができます。

構造解析を極めると、解析をしなくても、ある程度の応力分布やたわみなどを予想できるようになります。

また、性能を満たすための効率的な補強の方法を選択できるようになります。

sugitama

ベテラン設計者に対抗する手段として、経験の浅い若手設計者にこそ使ってほしいツールです。

  

 

構造解析のデメリット

構造解析にはいいことばかりではありません。難しい点もいくつかあります。

構造解析を行う上で、障害となるものを以下に列挙します。

構造解析によるデメリット
  • 条件を設定するのが難しい
  • 時間的コストと精度の折り合いが難しい
  • 結果を正しく評価できる能力が必要となる
  • 複雑な解析には高性能なPCが必要となる

以下に詳しく説明します。

 

条件を設定するのが難しい

構造解析を行うには、現実世界で起きている事柄を、仮想空間上に再現する必要があります。

ですので、現実世界でどんな外力や要因が発生するのかを正しく理解するところから始まります。

そして、その外力や要因を、仮想空間上にどのように再現するかをモデル化する必要があります。

(モデル化することを条件設定と言ったりします)

モデル化ができない事象については、構造解析を行うことはできません。

さらには、設定条件の間違いがあると、正しい結果が得られません。

sugitama

条件設定できない事象に対しては、そもそも解析することができません。

そのことも踏まえて、解析結果が「現実で起こることの全て」ではないことを理解しておきましょう。

 

また、これらの条件を正しく設定したとしても、解析結果が出るとは限りません。

設定する条件によっては、解析結果が収束しない場合もあります。

 

ですので、条件設定は、構造解析を行う際にはとても重要なプロセスとなります。

 

時間的コストと精度の折り合いが難しい

構造解析を行うことで、何らかの解析結果を得ることができます。

しかし、現実の事象と解析結果には必ず誤差が生じます。

なぜなら、解析をする際に設定する物性、モデル形状、設定条件(外力、拘束条件)、解法などの要因には必ず誤差が含まれているからです。

 

誤差を小さくするためには、メッシュを細かく切ったり、条件設定時に現実世界の事象を細かく再現したりすれば、精度は上がります。

しかし詳細に設定すればするほど、計算時間がかかってしまいます

 

sugitama

「詳細に条件設定して精度を上げようとした結果、解析が終わるまでに1年かかる」なんて、悠長なこと現実にはできないですよね。

 

計算時間と解析精度にはトレードオフの関係があります。

時間と精度のいい塩梅を見つけることが必要となります。

 

 

結果を正しく評価できる能力が必要となる

上記でも述べたように、構造解析で得られた結果は、現実世界での事象と異なる場合があります。

その際に、得られた解析結果が妥当なものかどうかを評価・判断することが必要となります。

想定しないような箇所に高い応力が発生した際に、「この応力波形は合っているのか間違いか」の判断が求められます。

また、どの程度信頼できる結果なのか、精度はどの程度なのか、そういった結果の裏付け作業が必要となります。

材料力学の知識や、構造解析の特性なども熟知しておく必要があります。

 

複雑な解析には高性能なPCが必要となる

構造解析を実行して結果を得るには、PCの計算時間が必要です。

複雑な解析をしようとすると、それだけ計算時間がかかります。

複雑な解析で実用レベルの精度を時間をかけずに得るためには、高性能なワークステーションが必要となります。

sugitama

複雑な解析をしたい場合でも、モデル化によって構造を単純化したり、モデルを分割したりと、今あるマシンで戦う方法もあります。

  

 

まとめ

本記事では、構造解析を行う上での心構えをお伝えしました。

構造解析は、ものづくりにおいて品質を向上させ、開発スピードを加速させるとても有用なツールです。

ただし、何でもできる万能のツールというわけではありません。

解析特有のジレンマ・デメリットもありので、よく理解して活用されることをおすすめします。

sugitama

デメリットもお伝えしましたが、ツールによっては、ある程度解消されているものもあります。(クラウド上での解析であったり、解析結果をレビューしてもらえる機能など) 

 

また、構造解析を通して、設計者の知識・スキル・センスを磨くことができます。

少なくとも私は、構造解析によってかなり設計者としての知識やセンスが磨かれたように思います。

ぜひ、設計経験の浅い若手設計者の方には、構造解析にトライしてみてほしいと思います。

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です