設計した部品やアセンブリに対して、強度や剛性が許容値範囲内か確認するために、構造解析をしたいという場面があるかと思います。
SOLIDWORKS PremiumのライセンスやSOLIDWORKS Simulationのアドインをお持ちの方は、SOLIDWORKS Simulationの機能を使用することができます。
SOLIDWORKS Simulationでは、作成した3Dモデルに対して、有限要素法(FEM)による構造解析を行うことができます。
SOLIDWORKS Simulationを用いて構造解析をすることで、手計算では難しいような形状の計算でも、発生応力や変形量を確認することができます。
大きな力が加わる部品や、高い剛性が求められるような部材は、簡易的にでも構造解析を行うことをおすすめします。
条件設定や結果の考察など、難しい場面もありますが、丁寧に解説しますので、ぜひ最後までお読みいただければと思います。
もくじ
メッシュ(要素)とは
構造解析、取り分け「有限要素解析」では、解析するモデルを細かな三角形や四角形の「要素」に分割して計算します。
平面であれば、三角形と四角形。立体であれば、四面体と六面体の要素に分割します。
この「要素」に分割することを、「メッシュを切る」と言います。
単に要素のことを「メッシュ」と呼んだりしますし、要素の集まりのことを「メッシュ」と呼んだりもします。
ニュアンス的には若干違いますが、小さく切った要素=メッシュ と思っていただいても問題ありません。
メッシュは、構造解析において非常に重要な因子の一つになります。
良いメッシュが切れるかに依って、解析の全てが決定するといっても過言ではありません。
細かくてサイズの小さいメッシュで埋め尽くされたモデルの解析は、精度が良くなります。
しかし、メッシュ数が多ければ多いほど計算時間が長くなってしまいます。
また、どんな形のメッシュにするか、どんな特性のメッシュにするかに依っても変わってきます。
メッシュによって解析の信用度・信頼性も決まりますし、解析コスト・時間的コストも決まります。
構造解析をする上で、どんなメッシュを切るか、メッシュの品質が非常に大事になります。
メッシュを切る作業自体は、CAEソフトがやってくれます。
メッシュをどのように切るかの設定が、解析者にとっての重要な作業になります。
節点とは
メッシュ(要素)の頂点のことを節点(せってん)と呼びます。
正確には、頂点などの計算するポイントのことを節点と呼びます。
構造解析では、節点に対して力を加えたり、力の釣り合いを計算したり、変位を計算したりします。
後で述べる1次要素では、節点は頂点にしかありません。2次要素では、頂点同士の中間点にも節点が設けられます。
メッシュを扱う際には「節点」という言葉もよく耳にしますので、理解しておきましょう。
メッシュの品質を決めるパラメータ
メッシュの品質=解析の品質 であることをお伝えしましたが、メッシュの品質を決めるパラメータもいくつかあります。
メッシュには、主に下記の4つのパラメータがあります。
- メッシュの形状の種類
- メッシュの次数
- メッシュの大きさ
- メッシュの形のきれいさ
それぞれについて解説します。
メッシュの形状の種類
メッシュの品質を決めるパラメータの一つに、メッシュの形状の種類があります。
メッシュの形状の種類は、主に三角形メッシュと四角形メッシュがあります。
立体メッシュの場合は、主に四面体メッシュと六面体メッシュがあります。
三角形4つからできているのが四面体メッシュ、四角形6つからできているのが六面体メッシュです。
四面体メッシュの特徴
四面体メッシュは三角形から構成されるメッシュです。
三角形は構造的に剛性が高いという特徴を持っています。
ですので、四面体メッシュも六面体メッシュに比べて硬くて変形しにくいです。
有限要素解析、とりわけ線形解析では、フックの法則により応力を計算します。
フックの法則 σ=Eε(σ:応力、E:ヤング率、ε:ひずみ)
変形しにくいということは、発生応力も小さいということになります。
四面体メッシュでは、最大応力や変位量が実際より小さくなってしまう傾向があります。
構造物の中でも、よく三角形を見ることがあるかと思います。
これは、四角形よりも三角形のほうが剛性が高いからですね。
これは、実際より危険側の結果となるため、結果考察時には注意が必要です。
ただし、実用的には、四面体メッシュを使用する場面が多くあります。
理由は、四面体メッシュは形状の再現性が高いからです。
どんな形状のモデルに対しても、メッシュを作成することができるということです。
六面体メッシュの特徴
六面体メッシュは四角形から構成されるメッシュです。
四角形は三角形に比べると構造的に柔らかいという特徴があります。
ですので、六面体メッシュは変形しやすいという特徴があります。
六面体メッシュを用いると、応力や変位の値は大きくなり、精度の良い結果を得ることができます。
ただし、六面体メッシュにも欠点があります。
それは、六面体メッシュでメッシュが切れない形状のモデルもあるということです。
もしくは、六面体メッシュで切るには時間がかかり過ぎる形状のモデルもあるということです。
六面体メッシュは解析モデルの形状により使えないこともあります。
が、使える状況であれば、積極的に取り入れることをおすすめします。
メッシュの次数
メッシュの次数により、メッシュで表現できる形状が異なります。
メッシュの次数とは、要素を区切る線が何次式で表されるかというパラメータです。
一般的に、構造解析では1次要素と2次要素が用いられます。
1次要素は、要素の頂点のみに節点がある要素になります。
2次要素は、要素の頂点と、頂点間の中間点にも節点がある要素になります。
要素の形状は、節点をどのようにつなげるかによって決まります。
1次要素の場合、頂点にある節点同士をつなげる線は直線となります。
2次要素であれば、頂点節点+中間節点により、頂点をつなげる線は2次曲線(放物線)で表現することができます。
直線でしか表現できない1次要素よりも、曲線も表現できる2次要素のほうが、形状を正確に表現することができるため、精度も良くなります。
SOLIDWORKS Simulationでは、デフォルトで2次要素となっています。
メッシュの大きさ
メッシュの大きさにより、解析精度が大きく変わります。
メッシュが荒いと、形状の再現性が悪く、応力値や変形が小さく出る傾向にあります。
かといって、メッシュが細かすぎると、精度の良い解析にはなりますが、計算時間がべらぼうに長くなってしまいます。
メッシュの適切な大きさは、解析するモデル、解析条件等によって異なります。
そのため、一意に「この大きさ以下にしましょう」ということは言えません。
ですので、解析者が都度、適切なメッシュサイズがどの程度なのかを見極める必要があります。
適切なメッシュサイズを見極めるには、メッシュサイズをいくつか変えた解析モデルを作成して、解析してみるといいでしょう。
メッシュを荒いものから細かいものにしていくと、解析値もある値に収束していく様子が見て取れます。
解析値とメッシュサイズの関係をグラフにすると一目瞭然です。
解析値と収束値(推測値)の誤差が許容範囲内となるメッシュサイズを、実際の解析でのメッシュサイズとしましょう。
メッシュを無限に細かくすることができれば、理論上は誤差は0となります。
解析精度を上げるには、メッシュの細かさが最重要ファクターです。
メッシュの形のきれいさ
メッシュの形状のきれいさによっても、解析精度が決まります。
メッシュのきれいさとは、形が整っているかということです。
メッシュのきれいさを判断する因子として、アスペクト比があります。
アスペクト比とは、メッシュの縦と横の比率のことです。
アスペクト比が1に近いほど、つまり正三角形や正四角形に近いほど、良質なメッシュとなります。
アスペクト比が大きくなると、歪んだ三角形や四角形となり、精度の悪い解析結果となります。最悪、計算できない場合もあります。
ぱっと見から、きれいなメッシュとそうでないメッシュを見分けできます。
綺麗なメッシュは、形が均一で、整ってるなーと感じると思います。
きれいにメッシュが切れていない場合は、再度、設定し直して切り直しするといいでしょう。
実用的には2次の四面体メッシュ、可能なら六面体メッシュ
メッシュのパラメータについて解説しましたが、実用的な結果を得るためには、2次の四面体メッシュがおすすめです。
一番良いのは、少ないメッシュ数で精度の良い解析結果を得られるため、六面体メッシュがおすすめです。
ですが、モデルの形状によっては六面体メッシュを作成できない場合も多いです。
そのため、実用的には2次の四面体メッシュを使用する場面が多いかなと思います。
四面体メッシュはどんな形状のモデルでもメッシュを作成できますし、2次要素であれば、ある程度精度よく解析を行うことができます。
1次の四面体メッシュでは、精度の良い解析はできないのでご注意ください。
まとめ
本記事では、構造解析におけるメッシュの重要性、メッシュのパラメータの意味や決め方について解説しました。
構造解析では、メッシュの切り方が解析精度と解析時間を左右します。
メッシュの切り方によって、応力値も許容値内に納まったり、許容値を超えたりもします。
特にメッシュサイズについては、一度の解析だけでメッシュのサイズを決めてしまわないようにしましょう。
何度か解析を繰り返して、最適なメッシュサイズを見つけるようにすることをオススメします。
手間はかかりますが、構造解析の信頼性を上げるための重要な作業です。
条件を設定して、最適なメッシュの設定ができたら、あとは解析を実行するだけです。
解析実行後は、解析結果を考察していく作業になります。
結果考察については、こちらの記事で詳しく解説していますので参考にしてください。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
①解析の心構え、②条件設定、③メッシュ、④結果考察 の4部に分けて解説いたします。
本記事では 第3部 メッシュ編 をお送りします。