設計業務・とりわけ作図を行う手段として、手書きのドラフターを使っていた時代から2DCADになり、今や3DCADが主流になってきています。
しかし、昔ながらの会社の方や昔ながらの設計者の方の中には、こう思われる方もおられるかもしれません。
本記事では、2DCADと3DCADを使ってきた筆者が、3DCADを導入するとどんないいことがあるのか、3DCADの魅力についてお伝えいたします。
3DCADを導入することで、2DCADに比べて設計がめちゃくちゃ楽しくなりますし、手戻り作業を大幅に減らせます。
計算や他の雑務に時間を取られないので、設計業務に注力できます。
不具合発生頻度が減るので、不具合時の嫌なストレスを削減できて健康になります(笑)
3DCADを導入することによるメリット・デメリットは以下の通りです。
3DCADを導入することで、設計作業自体が劇的に変化します。
3DCADの導入は、ものづくりにおいて必ずプラスになると思います。
3DCADへの移行という大きな時流に逆らわず、お試しいただくのもアリかな思います。
ご検討のためにも、ぜひ本記事を最後までお読みいただければと思います。
それでは、3DCADのメリット・デメリットについて詳しく解説していきます。
もくじ
3DCADのメリット
モデリングが楽しい
3DCADをオススメする上で、一番お伝えしたいのが、「3Dでの設計は楽しい」ということです。
3DCAD上で、部品やアセンブリを作っていく工程が何より楽しいです。
設計者が、自分自身で機械加工や板金加工をしているかのような感覚で、部品の設計(モデリング)ができます。
プラモデルを組立てていくような感覚で、アセンブリの設計ができます。
組み上がっていくアセンブリや、出来上がっていく複雑な部品を見ると、テンションが上がりますし、モデリングそのものが楽しくなります。
視覚的にわかりやすい
3DCADは2DCADに比べて、視覚的にわかりやすいです。
2DCADだと、図面を見る人は、三面図(正面図、平面図、側面図)から頭の中で立体を想像しながら、干渉がないか・この隙間はこれでいいかなどを検討しなければいけません。
簡単な部品や、部品点数の少ないアセンブリなら簡単かと思いますが、複雑な形状・部品がごちゃごちゃした図面だと、かなりの想像力とスキルが必要になります。
その点、3DCADは、立体モデルを作成して組み上げているので、図面を見る人は、想像力も特別なスキルも必要ありません。
3Dモデリングは仮想空間で試作を作っているような感覚です。
組立作業性や作業者の動線なども3DCAD上で検討することができますし、干渉しているかどうかも一目でわかります。
その結果、設計ミスを未然に防ぐことができ、手戻り作業を減らすことができます。
設計時の不具合が減ることで、不具合発生時の対応に追われることも少なくなります。
さらには、客先への説明資料やカタログなどにも流用しやすいです。
レンダリングという、3Dモデルの表面の色や質感を変化させるツールを用いることで、写真さながらの画像データを作成することもできます。
現場からドヤされて、胃の痛い思いをすることも少なくなります(笑)
設計補助ツールが充実している
3DCADは、設計する上で必要となる数値を自動で計算してくれます。
例えば、重量、重心、慣性モーメントなどは、3Dモデルを作成すれば、自動で計算してくれます。
また、構造解析や干渉確認ツールなどもあります。
これらは自動とはいきませんが、3Dモデリングの延長線上でできるため、大きな手間や時間をかけずとも、構造解析や干渉確認を行うことができます。
設計に必要な情報が自動で得られるので、とても便利です。
図面を書かなくてもいいので作図ミスが起きない
2DCADだと、図面的に崩壊している図を描いてしまうこともあります。(例えば、平面図と側面図で矛盾した形状なども描けてしまいます)
3DCADでは、モデリングを正に図面が自動で作成されます。図面は描かずに配置するだけです。
そのため、3Dモデルが間違ってさえいなければ、作図ミスが起きないようになっています。
(図面に変なところがある場合は、3Dモデルがミスしていることが多いです)
そもそも、自動で図面を描いてくれるため、線自体を描くことがほぼありません。
自動で陰線処理してくれたり、好きなところに切断線を引き、自動で断面図を作ったりすることもできます。
ライブラリが充実してくると、アレンジ設計などの場合、3Dモデルが完成すれば図面も完成している、なんてこともあります。
そうなると、そもそも図面を描かなくていいことになります。
また、もう一歩進んだ管理をするならば、MBD(Model Based Development:モデルベース開発)というものもあります。
MBDを導入すると、3Dモデルに寸法や幾何公差などを書き込むため、図面自体が不要になります。
面倒な断面図なども描かなくてよくなるのは嬉しいです。
複雑な形状の部品でも作れる
3DCADでは、複雑な形状の複雑曲面の部品なども容易に設計することができます。
なめらかな流線型のような形状であっても、3DCADのサーフェスモデリング機能を使えば、3Dモデルを作成することができます。
2次元図面では描ききれないような複雑な形状であっても、3Dモデルさえ作成できれば、そのままCAMで加工することもできます。
サーフェスモデリングは少し難しいですが、慣れれば設計の幅が広がります。
3DCADのデメリット
高いスペックのPCが必要になる
3DCADを導入するには、高スペックのPCが必要になります。
高クロックかつコア数多いCPU、大容量のメモリ、高性能なグラフィックボードは、3DCADを快適に使用するには必須となります。
扱う3Dモデルによって求められるスペックは異なりますが、2DCADで使用するPCよりも高い処理性能が必要になります。
初期導入のコストアップは否めません。
2DCADと操作が全く違う
2DCADと3DCADはモデリング方法が全く異なります。
2DCADは、基本的には寸法を決めて、線を引くという手順になります。(オフセットで線を引いていきます)
一方、3DCADで線を引く場合、基本的には適当に線を引き、その線に寸法や拘束条件を追加するという手順になります。
この違いに慣れてしまえば3DCADの描き方の便利さを実感するのですが、慣れるまでは違和感を覚える方もおられると思います。
2DCADユーザーが3DCADの操作に慣れるには、ある程度の時間やトレーニングが必要となります。
3DCAD操作のトレーニングの一助として、チュートリアルプログラムもありますし、解説してくれるYoutube動画なども豊富です。
うまく活用できれば、上達も早いです。
図面と3Dモデルの両方を管理する必要がある
3DCADでは、3Dモデルを基に図面を作成します。ですので、図面と3Dモデルの両方のデータを管理する必要があります。
仮に、作成した図面の形状を変更したい場合は、その図面の基にした3Dモデルの形状を修正し、その上で図面を修正するという流れになります。
2DCADでは図面の修正だけで済みましたが、3DCADでは3Dモデルの修正も併せて行う必要があります。
慣れてしまえば苦ではありませんが、はじめのうちは混乱するかもしれません。
作業者によってモデリング手順が変わるので、修正する際に変更箇所がわかりにくいことがある
3DCADでは、フィーチャーの作成手順が履歴として明確に保存されます。
最終的には同一形状になる3Dモデルであっても、フィーチャーの作成手順が異なる場合もあります。
基本的には、機械で加工するような手順でフィーチャーを構築することが望ましいですが、実際の加工手順がわかっていない場合、めちゃくちゃな手順でモデリングされてしまうことになります。
作成者の力量によっては、作成者以外がその3Dモデルを修正やアレンジするときにわかりにくいといった問題が出てきます。
モデルのどのフィーチャーのどの寸法を変更すればいいのか、探すのに時間を取られてしまうこともあります。
まとめ
本記事では、3DCADのメリット・デメリットについて解説いたしました。
一長一短ある中での筆者の意見は、「新規でCADを導入するなら、断然3DCAD」をオススメします。
新規で導入するのに、あえて古い2DCADを導入する理由もないですしね。
また、現状、2DCADユーザーの方も、3DCADへの移行を視野に入れてトレーニングしておくことをオススメします。
3DCADは開発・設計に非常に有用なツールです。しかし、それ以上に、楽しいし面白い!!
手戻り作業削減によるストレス削減で、心も体もハッピーに仕事ができます。
3DCADは全然難しくないです。慣れ・訓練が必要なだけです。
ぜひ3DCADを活用していただけたらなあと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
2DCADで業務を十分賄えているので、3DCADは使えなくても問題ないんじゃないのかい?
3DCADをあえて導入するメリットはあるのかい?