2021年にダッソーシステムズよりリリースされたSOLIDWORKS for Makers。
通常版のSOLIDWORKSに比べて低価格で使用できることから、個人的な趣味や学習用途でSOLIDWORKSを使用したいユーザーにとって、とても魅力的な製品となっています。
しかし、SOLIDWORKS for Makersとはどういった製品なのかがわからず、購入しようか迷っている方もおられるかと思います。
実は、SOLIDWORKS for Makersは通常版SOLIDWORKSとは異なる点がいくつかあります。通常版のSOLIDWORKSではできることでも、Makers版では制限されていることがあります。
私は、普段からSOLIDWORKSを使って設計業務を行っているメカ系エンジニアであり、リリース当時からずっとSOLIDWORKS for Makersユーザーでもあります。
本記事では、SOLIDWORKS for Makersを使い続けてみてわかった、SOLIDWORKS for Makersの実力について解説します。
この記事を読めば、SOLIDWORKS for Makersで何ができるのか・何ができないのかがわかります。SOLIDWORKS for Makersについて、より詳しく知ることができます。
低価格で利用可能なSOLIDWORKSに興味のある方や、導入を検討している方は、ぜひ最後までお読みください。
もくじ
SOLIDWORKS for Makersとは
SOLIDWORKS for Makersは、正式には、「 3DEXPERIENCE SOLIDWORKS for Makers」と呼ばれる製品になります。
ダッソーシステムズさんが直接提供してくださっている、個人向けのSOLIDWORKSです。
代理店等で販売されているSOLIDWORKSとは別の製品になります。
本記事では区別のため、代理店購入のSOLIDWORKSを”通常版”と呼ばせていただきます。
通常版SOLIDWORKSとの違いは?
SOLIDWORKS for Makersには、通常版SOLIDWORKSと比べると以下のような特徴があります。
- 低価格で利用可能
- サブスク型のコネクテッド版のみの販売
- 非商用利用に限定される
- メーカーや代理店のサポートが無い
低価格で利用可能
SOLIDWORKS for Makersは、通常版SOLIDWORKSよりも低価格で購入することができます。
通常版SOLIDWORKSでしたら、買い切り型ライセンスで100万円以上、サブスク型のコネクテッド版でも年額50万円以上します。
ところが、SOLIDWORKS for Makersは月額約2,200円(税抜)、年額約7,300円(税抜)で使用することができます。
正確には、月額15ドル、年額48ドルとなります。為替相場によっては金額が変わる可能性があります。
リリース当初は月額9.99ドル、年額99ドルでしたが、2023年11月に価格改正があり、よりお得に利用できるようになりました。
安いうえに、時期によっては割引セールを行っていることもあります。
2024年11月には、ブラックフライデー価格で50%OFFとなってました。
サブスク型のコネクテッド版のみの販売
通常版SOLIDWORKSには2種類のライセンスあります。買い切り型のデスクトップ版ライセンスと、サブスク型のコネクテッド版ライセンスの2種類です。
SOLIDWORKS for Makersはコネクテッド版ライセンスになります。買い切り型のデスクトップ型ライセンスはありません。
月ごとか年ごとのサブスク契約となります。
低価格で利用可能なので、「まずは1か月だけ」とかお試しもしやすいです。
また、コネクテッド版と同様の仕様となっていますので、使用するにはインターネット接続が必要となります。
非商用利用に限定される
SOLIDWORKS for Makersでは、用途が非商用利用に限定されています。
ですので、主には個人的な趣味の創作活動や学習用途での利用となります。
SOLIDWORKS for Makersを用いてビジネスを行うことはできませんので、ご注意ください。
サポートが手薄
SOLIDWORKS for Makersでは、メーカーや代理店のサポートは受けられません。
何かトラブルが起きた際には、自力での解決が必要となります。
SOLIDWORKSのWebページ内のFAQを見たり、自分で調べたりして対応するか、サポートコミュニティに質問してアドバイスをもらう形になります。
SOLIDWORKS for Makersは代理店を介さず、提供元のダッソーシステムズから直接購入する製品となります。
SOLIDWORKS for Makersを始める際は、ダッソーシステムズのWebサイトから自分で購入し、自分でインストールする必要があります。
本ブログには、SOLIDWORKS for Makersのはじめ方を丁寧に解説した記事もありますので、ぜひご覧ください。
SOLIDWORKS for Makersで【できること】
SOLIDWORKS for Makersでは、主にどのようなことができるかを以下に記します。
- 常に最新バージョンのSOLIDWORKSでモデル・図面作成
- 3DEXPERIENCEのアプリケーションおよびストレージの利用
- SOLIDWORKS Visualizeでのレンダリング
- Simulation Xpressでの強度解析
SOLIDWORKS for Makersでは、主に3DEXPERIENCE SOLIDWORKS Professionalライセンスと同様の機能やツールが利用できます。
常に最新バージョンのSOLIDWORKSでモデル・図面作成
SOLIDWORKS for Makersでは、通常版同様にモデリングや図面作成が可能です。
部品・アセンブリの3Dモデルを作成し、モデルから図面を作成することができます。
さらに、SOLIDWORKS for Makersは、通常版のコネクテッドライセンス同様に、常に最新バージョンのSOLIDWORKSを利用できます。
随時追加・更新される新しい機能も、すぐに利用可能です。
SOLIDWORKS for Makers起動の際に、随時バージョンアップのアナウンスがあり、クリックするだけで簡単に更新可能です。
また、Professional版に含まれるToolBoxなどの便利機能も利用可能です。
3DEXPERIENCEのアプリケーションおよびストレージの利用
SOLIDWORKS for Makersを購入すると、3DEXPERIENCEのアプリケーションもクラウドストレージも利用することができます。
3DEXPERIENCEのアプリケーションは種類が多いため、その一部をご紹介します。
- ブラウザでの3Dモデリング(xDesign、xShape)
- 部品やアセンブリごとの設計進捗状況やリビジョン、派生部品などの確認(Collaborative Lifecylce)
- 3Dモデルを見ながら、共同メンバーのレビュー・コメントを記載し残せる(3D Markup)
- アセンブリに含まれる部品からBOM作成(Product Explorer)
- 部品のCAMデータ作成やCAMでの加工確認(Shop Floor Machining)
- 共同メンバーのタスクの進捗や情報の共有(Collaborative Task)
- 作成部品の比較(Compare) など
3DEXPERIENCEアプリケーションはブラウザベースのアプリケーションです。
そのため、これらのアプリケーションをどの端末からもインストール不要で利用できます。
ワークステーションでなくても、タブレットやスマホからでも利用することができます。
3DEXPERIENCEのアプリケーションは、特にコラボレーション機能が充実しており、チームでものづくりを進める際に活躍するものが多いです。
チーム内での情報共有や意見交換が一つのプラットフォームで完結するので非常に便利です。
一人でのものづくりも自由気ままで楽しいですが、3DEXPERIENCEを活用することで、チームでの共創によるも大きな喜びも味わうことができます。
SOLIDWORKS for Makersを導入すると、ものづくりに役立つ3DEXPERIENCEプラットフォームの機能・ツールを丸ごと利用できます。
個人の創作活動で、プロの生産チームと全く同じ機能やツールを使えるところがMakersの面白いところです。
SOLIDWORKS Visualizeでのレンダリング
SOLIDWORKS for Makersでは、SOLIDWORKS Visualize Connectedを用いてレンダリング処理することが利用可能です。
3Dモデルに材料の質感や光の描写などを加えて、写真のような品質の画像を作ることができます。
SOLIDWORKS Visualizeは、単体で買おうとすると1ライセンス20万円以上のアプリですが、これもSOLIDWORKS for Makersのパッケージに含まれています。
Simulation Xpressでの強度解析
SOLIDWORKS for MakersではSimulation Xpressを用いた強度解析もできます。
Simulation Xpress自体はSOLIDWORKS標準機能ですが、Makersリリース当初は利用できない仕様となっていました。
ところが、2023年12月時点ではSimulation Xpressの機能が利用可能になり、SOLIDWORKS for Makersユーザーも強度解析を行えるようになりました。
高度な解析はできませんが、部品の簡単な線形解析でしたら実行できます。
個人ユーザーが求める機能を随時追加してくれます。
ダッソーシステムズさんは個人ユーザーも大事にしてくれるなあと感じます。
SOLIDWORKS for Makersで【できないこと】
SOLIDWORKS for Makersでは、通常版のSOLIDWORKSとほぼ同一機能を使用可能ですが、制限されていることもあります。
以下の3点については。
- Makersでの作成ファイルは通常版SOLIDWORKSでは開けない
- メーカーや代理店のサポート
- 2,000米ドル以上の収益
Makersでの作成ファイルは通常版SOLIDWORKSでは開けない
SOLIDWORKS for Makersで作成したファイルは、通常版のSOLIDWORKSでは開けません。
SOLIDWORKS for Makersで作成したファイルを企業向け製品で開こうとすると、このようなエラーメッセージが表示されます。
反対に、通常版SOLIDWORKSで作成したファイルをSOLIDWORKS for Makersで開くことは可能です。
Makersで一度でも保存したファイル(部品、アセンブリ、図面など)は、通常版SOLIDWORKSでは開けなくなりますので、ご注意ください。
正確には、SOLIDWORKSのネイティブファイルが読込み不可となります。
ネイティブファイルとはSOLIDWORKS専用のファイル形式で、「.SLDPRT」「.SLDASM」「.SLDDRW」などの拡張子のファイルになります。
ネイティブファイルは読込み不可ですが、中間ファイルに変換すれば通常版で読込み可能となります。
Makers作成ファイルを、STEPやParasolidでエクスポート→通常版でインポート→フィーチャー認識とすれば、通常版SOLIDWORKSでも一応読込み可能です。
メーカーや代理店のサポート
通常版SOLIDWORKSとの違いでも記載したように、SOLIDWORKS for Makersではメーカーや代理店のサポートを受けることができません。
SOLIDWORKS for Makersは個人向けの製品です。代理店を介さずに、ダッソーシステムズから直接購入し、ダッソーシステムズのWebサイトから自らインストールして使用します。
何か困りごとが起きた際は、【サポートコミュニティ】というMakersユーザーのコミュニティに質問を投稿して、アドバイスをもらいます。
サポートコミュニティ内は、メッセージベースで英語でのやり取りとなります。
回答をもらえるまでにタイムラグがありますし、翻訳の手間もあります。
ですが、コミュニティ内にはSOLIDWORKS関係者やシステムに詳しい方もいるため、適切なアドバイスをもらえます。
私もわからないことがあれば、サポートコミュニティで質問しています。
日本語で質問しても回答してもらえます。もちろん回答は英語ですが(笑)
2,000米ドル以上の収益
SOLIDWORKS for Makersは、非商用利用に限定された製品です。
ですので、SOLIDWORKS for Makersをビジネスに利用することはできません。
公式サイトには、「SOLIDWORKS for Makersで年間2,000米ドル以上の利益を得ると利用資格が無くなる」と記載されていますのでご注意ください。
ダッソーシステムズ側で収益を確認する術は無いので、あくまで自己申告となりますが、規約を守って使用しましょう。
規約違反が頻発する場合、Makersの値上げやサービス終了の可能性もあります。お互いにルールを守ってSOLIDWORKSを楽しみましょう。
まとめ
本記事では、SOLIDWORKS for Makersと通常版SOLIDWORKSとの違いや、SOLIDWORKS fo r Makersでできること・できないことについて解説しました。
SOLIDWORKS for Makersは、通常版SOLIDWORKSと異なる点もありますが、ほぼ同等の機能を非常に安価に使うことができます。
SOLIDWORKSを個人的に楽しみたい方には、とてもオススメの製品だと思います。
SOLIDWORKS for Makersを使うと、趣味も本業も楽しくなります。(個人談)
SOLIDWORKS for Makersを始めたい方は、下記の記事で【はじめ方】について詳しく解説しています。
≫【個人向け】SOLIDWORKS for Makersのインストール手順をわかりやすく解説します
最後までお読みいただき、ありがとうございました。