3DCADを使ったことのない方にとって、最初に導入する3DCADソフトを吟味することはとても大切なことだと思っています。
なぜなら、CADソフトによって操作性や手順などが全く異なるため、慣れるのに多くの時間がかかることが想定されるからです。
「使ってみたが、いまいち使いづらいなぁ」となって、途中で別のCADソフトへ鞍替えすると、また操作に慣れるための時間と手間が必要となります。
数ある3DCADソフトの中でも、筆者がオススメしているのは「SOLIDWORKS」です。
その理由として、設計しやすくなる機能・ツールが充実していること、多くの企業で導入されていることがなどが挙げられます。
詳しくはこちらの記事をご覧ください。
SOLIDWORKSを利用する場合、通常だと100万円以上するライセンスを購入する必要があります。
しかし、趣味の創作活動や3DCADの練習など限られた用途なら、超低価格なSOLIDWORKSを使用することができます。
この記事では、超低価格で使用できる製品「SOLIDWORKS for Makers」について詳しく解説します。
通常版との違いやインストール手順など、詳しくわかりやすく解説しています。
個人でSOLIDWORKSを使用してみたいという方は、ぜひお読みください。
もくじ
SOLIDWORKS for Makersとは
SOLIDWORKS for Makersは、正式には、「 3DEXPERIENCE SOLIDWORKS for Makers」と呼ばれる製品になります。
ダッソーシステムズさんが直接提供してくださっている、個人向けのSOLIDWORKSです。
代理店等で販売されているSOLIDWORKSとは別の製品になります。
本記事では、個人向けのSOLIDWORKS for Makersと区別するため、代理店で購入するSOLIDWORKSを「通常版」と呼びます。
SOLIDWORKS for Makersの特徴
SOLIDWORKS for Makersの主な特徴は以下の4点です。
- 圧倒的に低価格で使用できる
- サブスク型のコネクテッド版のみの販売
- 非商用利用に限定される
- サポートが手薄である
通常版SOLIDWORKSと異なる点がありますので、違いを理解した上で購入するようにしましょう。
圧倒的に低価格で使用できる
SOLIDWORKS for Makersは、通常版の製品と比べて超お手頃価格で導入することができます。
通常版SOLIDWORKSでしたら、買い切り型ライセンスで100万円以上、サブスク型のコネクテッド版でも年50万円以上します。
ところが、SOLIDWORKS for Makersは月額約2,200円(税抜)、年額約7,300円(税抜)で使用することができます。
正確には、月額15ドル、年額48ドルとなります。為替相場によっては金額が変わる可能性があります。
通常版と比べると、99%OFFの破格の価格設定となっています。
以前は月額9.99ドル、年額99ドルでしたが、2023年11月に価格改正がありました。
長期間使うユーザーには、よりお得に利用できるようになりました。
サブスク型のコネクテッド版のみの販売
通常版SOLIDWORKSには2種類のライセンスあります。買い切り型のデスクトップ版ライセンスと、サブスク型のコネクテッド版ライセンスの2種類です。
SOLIDWORKS for Makersはコネクテッド版ライセンスになります。買い切り型のデスクトップ型ライセンスはありません。
月ごとか年ごとのサブスク契約となります。
また、コネクテッド版と同様の仕様となっていますので、使用するにはインターネット接続が必要となります。
非商用利用に限定される
SOLIDWORKS for Makersは、個人がSOLIDWORKSを楽しんだり、学習したりする用途の製品になります。
あくまで、非商用利用限定のSOLIDWORKSということになります。
ですので、SOLIDWORKS for Makersを用いて、設計業務を行ったり、販売・収益につながるような使い方は基本的にはNGとなります。
公式のWebサイトによれば、年間2000米ドル以下の利益であれば、作成した製品を販売することもできます。
サポートが手薄である
SOLIDWORKS for Makersでは、メーカーや代理店のサポートは受けられません。
何かトラブルが起きた際には、自力での解決が必要となります。
SOLIDWORKSのWebページ内のFAQを見たり、自分で調べたりして対応するか、サポートコミュニティに質問してアドバイスをもらう形になります。
SOLIDWORKS for Makers こんな人にオススメ
SOLIDWORKS for Makersは、商用利用できない点や、サポートを受けられない点はデメリットですが、それ以上に超低価格で使用できるメリットは大きいです。
「SOLIDWORKSを使ってものづくりを楽しみたい」というコアなユーザーや、「SOLIDWORKSを勉強したい」という向上心のある方にとっては嬉しい製品となっています。
- 「自宅でもSOLIDWORKSの操作を練習したい」という向上心のある方
- 「SOLIDWORKSを趣味の創作活動に利用したい」という創作意欲のある方
- 「SOLIDWORKSの有用性を確認したい」という好奇心のある方
- 何かトラブルが起きた際に、自分で調べて対応できる方
SOLIDWORKS for Makersのはじめ方
SOLIDWORKS for Makersを始めるための手順は、以下の5つのステップになります。
- CADマシンの準備
- 3DEXPERIENCE ユーザーアカウントの作成
- ライセンス購入
- インストール
- 起動
各ステップについて詳しく解説します。
画面のスクショを多めに使って解説します。
CADマシンの準備
SOLIDWORKS for Makersを使用するには、グラフィックボード搭載のワークステーションが必要となります。
ワークステーションを選定する際のポイントは、以下の2点です。
- SOLIDWORKSのシステム要件を満たすこと
- クラウド適性を満たすこと
システム要件
SOLIDWORKSのシステム要件を満たす構成は以下の通りです。
OS | Windows 10 or 11 (MacOSは不可) |
CPU | 64bit の Intel/AMD |
メモリ | 16GB以上 |
グラフィックボード | 認定済みのカード、ドライバ |
ドライブ | SSD推奨 |
詳しくは、SOLIDWORKSのWebサイトに記載がありますので、参照ください。
また、ワークステーションの選び方がわからない場合は、オススメのPCを紹介していますので、こちらの記事をご覧ください。
≫【3DCADに最適なPCはコレ!】SOLIDWORKSに必要なスペックとおすすめのPCを紹介します
クラウド適性
SOLIDWORKS for Makersは、通常版のSOLIDWORKSコネクテッドと同様に、クラウド適性が必要となります。
こちらも、3DEXPERIENCEのWebサイトにクラウド適性の確認ページがあります。Webサイトより「互換性をテスト」をクリックして、適正確認用のファイルをダウンロードします。ダウンロードしたファイルを実行すれば、適性のチェックができます。
クラウド適性の詳細な方法については、こちらの記事を参考にしてください。
≫【メモ】クラウド版SOLIDWORKSのためのドライバアップデート手順について解説
3DEXPERIENCE ユーザーアカウント登録
SOLIDWORKS for Makersを使用するには、3DEXPERIENCEのユーザーアカウントが必要となります。
SOLIDWORKSを扱うダッソーシステムズのWebサイトに移動し、新規アカウントを作成します。
右上にあるアカウントボタンをクリックします。
「3DEXPERIENCE IDを作成」をクリックします。
電子メール以下の必要事項を記入して、「登録」をクリックします。
登録した電子メールアドレスに、3DEXPERIENCE ID account – Email verification (アカウントの確認メール)というタイトルのメールが届きます。
「・To validate your account,…」以下のリンクをクリックして、アカウントの本登録が完了となります。
ライセンスの購入
SOLIDWORKS for Makersのライセンスを購入します。
SOLIDWORKS for MakersのWebサイトにアクセスして、「今すぐ購入」をクリックします。
右上の「ログイン」をクリックし、ログイン画面から先ほど登録したアカウントでログインします。
サブスクリプションのプランを選択します。
料金は毎月のサブスクなら9.99米ドル(税込約1800円)、毎年のサブスクなら99米ドル(税込約18000円)となっています。
2023年11月20日に価格改正があり、現在の料金は、毎月のサブスクで15米ドル(税込約2,400円)、年毎のサブスクで48米ドル(税込約8,000円)となりました。
4か月以上使用するなら、年契約でのサブスクの方が断然お得です。ですが今回は、毎月のサブスクリプションを選択します。
選択したら、「カートに追加」をクリックします。
カート内の情報が合っているか確認して、右下の「支払いへ移動」ボタンをクリックします。
請求先住所を入力するフォームになりますので、必要事項を記入し、「次へ」をクリックします。
3DEXPERIENCE のIDと紐づけされているため、個人/法人の選択欄、名前入力欄は変更できないようです。
同じ画面で、連絡先の項目もありますので、編集をクリックして電話番号の入力と、利用条件を確認して「以下を承認します」をチェックします。
最後に、決済情報を入力します。
支払方法は、VISAかMastercardかAMEXのクレジットカードのみ可能です。諸々入力した後、「注文を確定」をクリックします。
購入が完了すると、下記のようなメッセージが表示されます。
さらに、登録したメールアドレスに、ダッソーシステムズからのメールが2通届きます。
1通はサブスクリプションの確認メールです。
メール内には、
- 契約内容(月ごとのサブスクか年ごとのサブスクか)
- サブスクの有効期限(更新日)
- 金額
が記載されていますので、確認しておきましょう。
サブスクリプションは期限が過ぎると自動的更新されます。
もう1通はサブスクリプション利用開始の連絡メールです。
メールのリンクボタン「Launch your 3DEXPERIENCE platform」をクリックして、インストールの手順へと進んでいきましょう。
SOLIDWORKS Connected のインストール
それではいよいよSOLIDWORKSをインストールしていきましょう。
メールのリンクボタンから、3DEXPERIENCEのダッシュボード画面に移動できます。
このリンクはブックマークしておくと便利です。
ダッシュボード画面左上の丸いボタンをクリックします。
左側リストの中から、「SOLIDWORKS Connected」をクリックします。
3DEXPERIENCEプラットフォームを初めて使用する場合は、下記のようなウインドウが表示されます。
「3DEXPERIENCE Launcher をダウンロード」をクリックします。
ダウンロードした3DEXPERIENCE Launcherのファイルを起動します。
3DEXPERIENCE Launcherのインストーラが起動します。
特に問題がなければ、画面のウィザードに従ってインストールを進めればOKです。
引き続き、下記のようなメッセージが表示されます。
直訳すると、「アプリケーションが3DEXPERIENCE Launcherにコンタクトし、信頼できるサードパーティとして次のURLを使用するよう求めています。このURLが現在接続している3DEXPERIENCEサーバーに対応していることを確認してください。」となります。
3DEXPERIENCEのダッシュボード画面のURLを確認し、OKなら「Always」をクリックします。
3DEXPERIENCEのダッシュボード画面に戻ります。
「SOLIDWORKS Connectedを含むすべてのロールをインストール」をクリックします。
3DEXPERIENCEのインストーラが起動します。「次へ」をクリックします。
SOLIDWORKS for Makersはクラウド型のライセンスになりますので、クラウド適正を確認する必要があります。
クラウド適性を満たしているかを確認する場合は、下記の「3DEXPERIENCE Platform オン・クラウドのサポート」をクリックしてください。
クラウド適正確認の詳細な手順は、下記の記事で解説しています。
≫【メモ】クラウド版SOLIDWORKSのためのドライバアップデート手順について解説
クラウド適正確認ができれば、「次へ」をクリックします。
「次へ」をクリックします。
「次へ」をクリックします。
場合によっては、下記のようなメッセージが表示されます。
SOLIDWORKS for Makersをインストールするにあたり、JDKが必要となります。
このようなメッセージウインドウが表示される場合は、こちらの記事を参考に、JDK11をインストールしてください。
特に問題がなければ、下記のように進みます。ここで「インストール」をクリックします。
ファイルのダウンロード、インストールが始まります。
通信環境にも依るかと思いますが、私の場合は約1時間ほどかかりました。
インストールが終わると下記画面となり、「閉じる」をクリックしてインストールを終了します。
以上でSOLIDWORKS Connected のインストールが完了します。
これらの手順で、SOLIDWORKS for Makersを使用することができます。
SOLIDWORKSの起動
SOLIDWORKS for Makersを起動するには、3DEXPERIENCEのマイページにログインする必要があります。
ダッシュボード画面から、「SOLIDWORKS Connected」をクリックします。
SOLIDWORKSの起動が始まると、下記のようにロゴと3Dモデルとステータスが表示されます。
SOLIDWORKSが起動しました。
しっかりと「Maker」と表記されています。
通常版のSOLIDWORKSと大差はありませんが、ツリーのアイコンに歯車の中に”m”と書かれたマークが追加されています。
SOLIDWORKS for Makersと通常版との違い
SOLIDWORKS for Makersを実際に使用してみて、感じたことをやわかったことがありましたので、下記にお伝えします。
最新バージョンのSOLIDWORKSを使用可能
筆者は、これまでデスクトップ版SOLIDWORKSを使用してきました。
デスクトップ版のSOLIDWORKSは、買い切り型のライセンスになりますので、購入したバージョンのSOLIDWORKSを使い続けるという形になります。
SOLIDWORKS for Makersはクラウド型の製品になります。
仕様としては、SOLIDWORKSコネクテッド版と同じで、インターネットに接続して、3DEXPERIENCEにログインして使用する形になります。
常に最新バージョンのSOLIDWORKSを使用できるので、「新しい機能を試したい」という探求心・好奇心のある方には特にオススメの製品だと思いました。
また、クラウドには利用可能なオンラインストレージも25GB分用意されています。
設計したモデルをストレージに保存して、プロジェクトのメンバーと共有するといった使い方もできます。
Professional版を使用可能
通常版のSOLIDWORKSには、【Standard】・【Professional】・【Premium】の3種類のパッケージが用意されています。
SOLIDWORKS for Makersでは、【Professional】版と同様の機能を使用することができます。
ただモデリングと図面を描くだけではなく、SOLIDWORKSの付随機能も利用できます。
Toolboxは実設計の際によく使う機能ですし、SOLIDWORKSビジュアライザでレンダリングすることも出来ます。
3DEXPERIENCEのアプリケーションも使用可能
さらに、SOLIDWORKS for Makersを購入することで、3DEXPERIENCEのアプリケーションも使用可能となります。
- xShape(サーフェスモデリングに特化したアプリケーション)
- xDesign(ブラウザベースの3Dモデリングアプリケーション)
上記2つは、クラウドアプリですので場所も端末も選ばずに使用できます。
メーカーや代理店のサポートは受けられない
SOLIDWORKS for Makersは、個人向けの製品になります。
購入したりインストールしたりする際も、自分自身でダッソーシステムズから購入し、ワークステーションにインストールし、トラブルが起きてもすべて自分自身で対応する必要があります。
代理店を介さない製品ですので、優しくサポートしてくれる代理店もありません。
ソリッドワークス・ジャパンさんからのサポートもありません。
そういった意味では、SOLIDWORKSや3DCADについて理解があり、ある程度の問題なら自身で解決できるような方でないと、使いこなすのは厳しいのかなと感じました。
全くの初心者の方が、「とりあえずやってみようかな」で始めるのは、少しハードルが高いかもしれません。
FAQを見てもわからないような問題はほぼ無いので、安心していただいて大丈夫です。
作成したファイルは正規版SOLIDWORKSでは開けない
SOLIDWORKS for Makersで作成したファイルは、正規版のSOLIDWORKSでは開くことはできません。
これは、非商用利用と銘打っていることの対応と思われます。
逆に、正規版SOLIDWORKSで作成したファイルは、Makers版で開くことはできます。
また、STEPなどの中間ファイルに変換すれば、Makers版で作成したファイルも正規版で開くことはできます。
総評:低価格でSOLIDWORKSを楽しめる、魅力ある製品
SOLIDWORKS for Makersを実際に使ってみて、偏見なしには語れませんが、とても有用なツールだと感じました。
月々2000円足らずで、SOLIDWORKSの機能を使うことができ、更には付帯アプリまで利用できます。
非商用利用限定ですので、趣味の範囲や個人的なプロジェクトに使用したい方、SOLIDWORKSを勉強したい方にはもってこいの製品だと思います。
個人的には、価格的にも機能的にも魅力ある製品だと感じました。
結論:低価格でSOLIDWORKSを楽しめる魅力的な製品
本記事では、SOLIDWORKS for Makers版のインストール手順について解説しました。
SOLIDWORKS for Makersは、正規版SOLIDWORKSとほぼ同じ機能を超低価格で使用することができる、とても魅力的な製品だと感じています。
Makers版は非商用利用のみと、使用範囲は限定的ですが、趣味に使いたい方、SOLIDWORKSの勉強をしたい方にはオススメです。
用途に制限はあるものの、コスパに優れた良い製品だと思います。
また、SOLIDWORKS付帯のアプリケーションも、3DEXPERIENCEのアプリケーションも使用できますので、スキルの幅を広げたい方にも、ぜひオススメしたい製品です。
SOLIDWORKS for Makersで、3DCADの楽しさを実感してもらえたらと思います。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。
sugitama様、
3DEXPERIENCE SOLIDWORKS for Makersについて詳しい情報を共有くださり、ありがとうございます。
弊社イベントでのご講演をお願いしたいのですが、ご連絡を頂戴できませんでしょうか?
公開されているコメントフィールドのようですので、ご興味をいただけましたらメールをいただければと存じます。よろしくお願いいたします。